(25)啄木が生まれ・育ったお寺

(1)啄木が生まれた常光寺
常光寺は石川啄木の生誕の地(寺)です。 啄木は明治19年2月、岩手県日戸村の常光寺で父一禎、母カツの第3子として生まれました。しかし、翌20年3月、一禎が隣村の宝徳寺住職に移ったのに伴い一家は渋民村に移っていますので、啄木が常光寺で過したのは1年1ケ月でした。常光寺は、当時の寺は改築されましたが、啄木の生まれた部屋が保存されており、本堂前には推定樹齢300年と呼ばれる生い茂るうっそうとした杉木立があり、金田一京助書による「石川啄木生誕の地」の碑があります
 



案内板の啄木の歌


たわむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
   啄木








金田一京助書による「石川啄木生誕の地」の碑


啄木の部屋


(2)啄木が育った宝徳寺
宝徳寺は石川啄木記念館の近くにあり、啄木が育ったお寺です。啄木の父一禎[いってい]はこの寺の住職で、啄木は1〜18歳までをこの寺で過ごし、『悲しき玩具』や『一握の砂』にも歌われている。啄木の命日4月13日には、啄木忌が開かれます。




山門


@宝徳寺境内の啄木歌碑

宝徳寺の山門を入るとすぐ右側に啄木歌碑があります。この歌碑は昭和36年4月に建立されており、歌は、 新日本(明治44年7月号)に発表し、悲しき玩具に掲載されている。


 宝徳寺の啄木歌碑


ふるさとの寺の畔の
ひばの木の
いただきに来て啼きし閑古鳥
   啄木






啄木の間

庭には白頻の池があり、中学時代に用いたペンネーム「白頻」はこれに由来しているとのことです。


白頻の池


A啄木の詩碑

本堂の前庭には、昭和37年10月には啄木の詩「凌霄(のうぜん)花」の一節の碑が建立された。




君が墓あるこの寺に
時告げ法の声をつげ
君に胸なる笑みつげて
わかきいんちに鐘を撞く
君逝にたりと知るのみに
がんばせよも美しき
み霊の我にやどれと
人に知らねば身を呼びて
うつけの心の唖とぞ
あざける事よ可笑しけれ



B宝徳寺駐車場の啄木歌碑

宝徳寺の前方50mほどのところに駐車場があり、ここには平成13年に建立された啄木歌碑があります。



駐車場の歌碑

今日もまた胸に痛みあり。
死ぬならば
ふるさとに行きて死なむと思ふ。
     啄木


この歌は、雑誌「新日本」(明治44年7月号)に発表「悲しき玩具」に掲載されている。


(24)渋民公園の啄木歌碑


@公園内の啄木歌碑

盛岡市玉山区渋民にある渋民公園は啄木記念館から歩いて5分ほどのところにあり、ここには大正11年に建立した国内で第1号の啄木歌碑があります。歌碑の北側には北上川が流れており、鵜飼橋が架けられている。






やはらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けどごとくに
   啄木



碑陰には「無名青年の徒之を建つ」とあります


鵜飼橋

啄木の詩「鶴飼橋に立ちて」では"橋はわがふる里渋民の村、北上の流に架したる吊橋なり。岩手山の眺望を以て郷人賞し措かず。"と記しているが、現在は吊橋ではありません。啄木の頃は渋民駅はなく好摩駅まで歩いたので、旧鵜飼橋を渡り、鉄道沿いに好摩駅に歩いていたと言われている。


A渋民小学校の啄木歌碑

渋民小学校は啄木記念館と渋民公園の中ほどにあります。渋民小学校玄関前には昭和58年3月に建立された啄木歌碑があります。この歌碑は同校の卒業生が卒業記念に建てたもので、歌碑の台座は卒業生たちが近くの北上川から拾ってきた石を積み重ねて作り上げたといわれています。


渋民小学校






その昔
小学校の柾屋根に我が投げし鞠
いかにかなりけん
   啄木



また、玄関の横には啄木の「雲は天才である」の中で作詞した歌を渋民小学校の校歌としており、その校歌を刻んだ碑が建立している。



校歌 作詞 石川啄木
(1)春まだ浅く 月若き
生命の森の 夜の香に
あくがれ出でて 我が魂の
夢むともなく 夢むれば
さ霧の彼方 そのかみの
希望(のぞみ)は遠くたゆたいぬ

(2)そびゆる山は英傑の
跡を弔ふ、墓標
音なき河は千載に
香る名をこそ流すらむ。
此處は何處と我問へば、
汝が故郷と月答ふ。

(3)雪をいただく岩手山
名さへ優しき姫神の
山の間を流れゆく
千古の水の北上に
心を洗ひ 身を清め
学びの道に進めかし

(1)と(3)の5行目と6行目は「雲は天才である」の中では空白になっているので、学校の方で補作し校歌に加えている。
この校歌を刻んだ碑は、同校の創立110周年を記念し、昭和58年9月に建立された。


B「啄木ふる里の道」の啄木歌碑

渋民公園から啄木記念館までの道路を「啄木ふる里の道」と称し、そのうち渋民小学校脇の路上に啄木の歌10首を刻んだ石を埋め込んでいる。


啄木ふる里の道




石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でてかなしみ
消ゆる時なし






こころよき疲れなるかな
息もつかず
仕事をしたる後の
この疲れ



その他
神無月岩手の山の初雪の眉にせまりし朝を思ひぬ    啄木
不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心
その昔小学校の柾屋根に我が投げし鞠いかにかなりけむ
このごろは母の時時ふるさとのことを言い出づ秋に入れるなり
やわらかに積もれる雪に熱てる頬を埋むるごとき恋をしてみたし
こころよく我にはたらく仕事あれそれを仕遂げて死なむと思ふ
ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく
汽車の窓はるかに北にふるさとの山見え来れば襟を正すも



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